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コラムColumn

つぶやき 角 昌晃

 2007年〜2010年のつぶやきです。

大田市役所の取り組み

先日から大田市役所の方が患者の通院支援についての相談にお見えになっています。
大田市の腎友会の陳情努力の賜物と思っていますが、現状を改善しようと動き出された大田市政にも深い敬意を表したいと思います。

新聞などで騒がれている島根県西部の医療崩壊の現実は深刻であり、記事に書かれているような小泉改革による研修医制度の変更だけが原因ではありません。
徒弟制度に馴染まない若い研修医の気質(すぐに辞めてしまう)も関係しているのかもしれませんが、それ以上に魅力ある医局、大学作りをしてこなかったトップ集団に原因が大きいと思います。魅力ある人格者をトップにしなければ将来に展望を持てずに人は去っていくのです。
また地域住民の中央志向も原因の一つであり、田舎から都市へ患者が流出すれば田舎の医療は悪循環に陥り崩壊してしまいます。医者を供給する側からすれば都市に通えるなら医師の派遣は必要ないですし、派遣するとしてもより経験の少ない医師を派遣するでしょう。そして患者は不安になりさらに都市部への受診が加速する。結果地方病院の経営は悪化していくのです。
お金を持つものがよい医療を受けることができてお年寄りなどの弱者は明治の時代のように病気になったら仕方がないというような生活をしなくてはならないのでしょうか。

さて、患者の通院について私が市役所の方に申し上げたのは以下のことです。

ひとつはばらまきではいけないということ。
本来通院は患者本人、あるいは家族が行って然るべきものであり、全ての通院を補うようなタクシー券の配布などは論外です。他の病気の方々はご自分で通院されているのですから、そういう方から見ればいくら透析が特殊な治療形態であるとしても不公平に思われるでしょう。
すぐに病院や行政にたかるのは言語道断であり、あくまでも自分でできることは自分でやるというのが基本的スタンスです。

ふたつ目は、問題なのは自分で通院しようと思っても適当な交通機関がないということ。
これには交通機関を運営する経済的問題もあるでしょう。
だったら大田市立病院に通院する方や市立病院で廃止になった診療科の開業医に通院する方すべてが協力して、主要な医療機関を巡回する乗り合いタクシーを運行してはどうでしょう。経営上民間交通機関に赤字になっていただくわけにはいかないですが、ボランティア精神で営業努力はしていただき、当然患者は料金の一部を自己負担とし、タクシー券を配る代わりに行政からは金銭的補助を行う。また医療機関から寄付を募って補助を行ってもいいでしょう。

今、大田市は通院の実態調査に乗り出され、当然我がクリニックも協力させていただいていますが、新たな通院手段の実現に大きな期待を寄せています。
今こそ公共であれ民間であれ皆が協力して大田市の医療を守っていかねばならないと思うのです。大田市立病院を大事に守らなければ、将来高速道路が完成したとしても簡単な受診のためにわざわざ出雲まで行かなければならない事態が起こりうるのです。
これには市民の現状への深い理解と、目先に囚われない将来を見据えた行動が必要ですし、当然行政の支援、医療者の郷土愛も問われることになります。

島根の人間だから言うわけではないですが、もっと自分の故郷を愛して島根に戻ってくる島根人が沢山あっても良いと思うのです。
組織を滅ぼすのも人、再生させるのも人。
人の力とは時に恐ろしく、厭らしく、それでいて心強く、頼もしい面もあります。
人の力の良い面を信じたいと思います。


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